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公益社団法人 地盤工学会東北支部受賞業績紹介
2025年6月 掲載
令和6年度 地盤工学会東北支部賞
令和6年度 地盤工学会東北支部賞 受賞者および受賞業績について
地盤工学会東北支部では,地盤工学に関する身近で地域に密着した事業・研究等を通じ,会員の専門技術力の向上,調査・設計・施工等の効率化・レベルの向上,地盤工学のPR・イメージ向上などに貢献した業績を毎年度公募しております。 応募があった業績については,書面や地盤工学フォーラム東北における発表内容を厳正に審査し,優れた業績を表彰しております。
令和6年度につきましては,以下のとおり受賞者を決定いたしました。受賞者各位に敬意を表し,ここに記載いたします。
技術的業績部門
支部賞(最優秀賞) 「八戸地域におけるしらす盛土の不飽和浸透挙動と予測に関する研究」
業績の概要:火山灰質砂質土である軽石混じりのしらすは多孔質で破砕性に富み,保水性が高いことが知られている。降雨後や湿地帯,谷埋め盛土など水分が高い状況下で地震動が加わった時,大規模な斜面崩壊の被害を起こす事例があり,本研究ではその降雨時浸透挙動の実測と予測解析を行った。
施工後,約18年にわたるしらす野外盛土の降雨時浸透挙動(体積含水率θおよびサクション経時変化)把握の結果,普通砂より保水性が高いこと,経年変化により植生根の侵入,表層部での細粒分の流失,間隙増加によると思われる保水性の低下を定量的に把握できた。
実測から得られた@初期境界条件,A水分特性曲線の吸水・排水両過程,B日射量に応じた植生植物からの蒸発散特性を考慮できる二次元不飽和浸透流有限要素解析コードを開発し,施工盛土と同じ形状モデルで再現解析・検証を行った。盛土内6測点でのθ実測値と解析値の比較を行ったところ,良好な整合性が得られた。
支部賞 「αシステムを利用した盛土転圧施工の効率化事例」
業績の概要:本工事は,築堤の工期短縮を図るため,後述するαシステムを利用することで,転圧回数および時間を要していた締固め品質管理方法を見直したものである。具体的には,試験盛土結果を踏まえて,まき出し厚を30cmから50cmに厚くし,転圧回数を6回から4回(のちに2回)へ低減することとした.締固め品質の低下が懸念されたことから,地盤剛性の増加に伴い振動ローラの振動輪加速度応答が乱れる傾向(乱れ率)を利用し,面的かつリアルタイムに乱れ率が確認可能なαシステムを採用することした.
本工事完了後に,取得した乱れ率・乾燥密度・含水比・飽和度を整理し考察した。その結果,乱れ率が低い箇所は,相対的に含水比が高く、締固め度が低くかつ飽和度が高い傾向があることを確認した.
さらにαシステムを活用しながら築堤することで,築堤時に面的かつ積層方向に均一な品質となるよう現場締固めの工夫ができること,維持管理時のチェックポイントを明確にできること等の用途を確認することができた.
支部賞 「山形県の2つのため池改修工事に伴う調査・解析・設計の事例」
業績の概要:本報告は,山形県の村山地域にある幕井ため池と置賜地域にある鏡沼ため池の改修工事を実施するために必要な調査・解析・設計業務及びその後の工事対応等を実施した事例である.
幕井ため池は,現状で漏水しているAA種に該当するため池を現行の耐震性能(レベル1及びレベル2耐震性能照査)を満足した状態に改修することが目的であった.また,当該地付近で基準値を満足する築堤材料が少なかったため,極力土量を減らす工法とし,傾斜遮水ゾーン(ベントナイトシート)を挿入する設計に変更した事例である.
もう一つの事例は,令和4年8月山形・新潟県豪雨により破堤した鏡沼ため池の災害復旧事業である.比較検討により傾斜遮水ゾーン型(前刃金土)とし,堤体材料としては,池内及び近傍の土取り場で採取した全5試料を基に土質試験および配合試験を実施した上で,遮水ゾーン(刃金土)には放水路の掘削発生土,ランダムゾーンには池内の堆積土を盛土材として使用する計画とした.検討した堤体に対して安定計算を実施し,耐震性能が満足していることを確認した事例である.