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2023年6月 掲載
令和4年度 地盤工学会東北支部賞
令和4年度 地盤工学会東北支部賞 受賞者および受賞業績について
地盤工学会東北支部では,地盤工学に関する身近で地域に密着した事業・研究等を通じ, 会員の専門技術力の向上,調査・設計・施工等の効率化・レベルの向上,地盤工学のPR・イメージ向上などに貢献した優れた業績を毎年度表彰しております。
令和4年度につきましては,書面審査および地盤工学フォーラム東北2022〈第41回研究討論会〉における発表内容の審査により, 以下のとおり受賞者を決定いたしました。受賞者各位に敬意を表し,ここに記載いたします。
技術的業績部門
支部賞(最優秀賞) 「旧北上川河口部における引き込み沈下対策を併用した堤防の新設事業」
業績の概要:宮城県石巻市の旧北上川河口部では、震災後、津波・高潮対応の高さで堤防を新設する復旧・復興事業が進められた。 事業の対象区間では、最大厚50mにも及ぶ軟弱地盤が分布し、かつ、背後に家屋が密集するため、引き込み沈下(不同沈下)の対策の必要性が認識されていたが、 堤防新設区間の延長がL=4.0kmと広域であり事業費の増大が懸念されたため、試験盛土を実施して対策工の最適化を図るものとした。 まず、家屋と十分な離隔がある湊地区で無対策の試験盛土を実施し、高精度の土質試験に基づく物性値の設定方法や弾塑性FEM解析による影響予測の方法を検証・確立した。 その後、変位と振動の吸収効果に優れた固化改良壁を併用した試験盛土では、改良体と軟弱地盤の接触面にせん断破壊要素を組み込んだモデルの有効性が確認され、 当初4列必要とされた固化改良壁を2列に縮小することが出来た。 モニタリングを併用した施工では、大きなトラブルや変位もなく、令和4年3月に事業が完成した。
支部賞 「小土被りかつ短時間作業間合いで鉄道直下に水路函体を施工」
業績の概要:本工事は、東北本線岩手飯岡・仙北町間で交差する一級河川南川の河川改修工事に伴い、東北本線交差部に函体を施工し、その後旧橋りょうの撤去を行うものである。
線路交差部の函体は鉄道・河川の条件により土被りが小さく、他線区と比較して作業時間が短いことに加えて、立坑掘削が東北本線に並走する東北新幹線高架橋に近接するなど、施工におけるリスク管理が重要であった。
函体はJES(Joint-Element-Structure)工法を採用することで短い作業時間でも非開削により施工を可能とした。箱型鋼管(エレメント)の掘進工法や設備配置の検討により新幹線側立坑を最小化したこと、掘進時の軌道隆起対策として推進に先立ちバラストの鋤取りやバラストを詰めた土のう袋へ置き換えること、推進時の圧力管理や既設新幹線高架橋の変位監視など多方面における施工リスク検討と対策を実施し、安全に線路交差部の函体施工を完了することができた。
支部賞 「福島県沖地震による常磐自動車道切土のり面災害の調査・復旧について」
業績の概要:2021年2月13日に発生した福島県沖を震源としたM7.3の地震により、常磐自動車道の切土のり面が幅70mにわたり崩落した。
地震後すぐに土砂排除とのり面応急復旧工事にかかり、91時間後に安全を確保し、通行止めを解除した。
その後、現地踏査やボーリング調査等により崩落の原因を調査した。調査の結果、次のような状況が確認された。
@のり面の背後が沢になっており、雨水が浸透しやすかった。
Aのり面内に凝灰岩層が存在していた。この層はのり面から道路に向かって若干下がる傾斜であった。
Bのり面内に垂直方向に発達した亀裂が存在した。
これらの状況から、地震により亀裂が開くことによって生まれた土塊が凝灰岩層上をすべることで崩落が起こったと考えられた。
考察された原因に基づき、今後の再崩落を防止するために、崩落の原因となりうる凝灰岩層より上にある土砂をすべて取り除き、のり面をコンクリートで保護する工事を行った。
貢献的業績部門
大河原正文氏 岩手大学理工学部システム創成工学科 教授
千葉 克己氏 宮城大学事業構想学群 教授
高坂 敏明氏 株式会社ダイヤコンサルタント 企画・技術本部 取締役本部長